アマニタ・パンセリナ:中島らも氏のドラッグ体験記(面白いです)

本の概要

ここはアブナイ立入り禁止の世界!幻覚サボテンや咳止めシロップ、大麻、LSDに毒キノコなど、青春の日の奇天烈体験を通して、ひとの本質、「自失」の世界を考察する。

読んでみて思ったこと

大麻について調べていたら、目についたので購入。

結果としては、めちゃくちゃ面白い。しかし各種ドラッグの解説などは、あまり書かれていません。著者である「中島 らも氏」の個人的な体験談がベースです。以前に「今夜、すベてのバーで」というアル中の体験記を読んだのですが、これも面白かったです。

なお、このレビュー記事を書きつつ著者について調べていたら、52歳で亡くなっていることが分かりました。死因は階段から転落とのこと。ご冥福をお祈りしつつ、また別の書籍も読ませてください。素晴らしい作品を残してくださったことに、心から感謝します。

※補足:書籍名の「アマニタ・パンセリナ」とは、毒キノコである「テングタケ」の学名です。

» アマニタ・パンセリナ(著:中島らも)

僕のハイライト

飲み始めて三日目くらいに、異常にシャキーンとしている自分に気づいた。その高揚の仕方というのは、言葉にして言えば、 「君たち、何をしているんだ。一緒に地球を守ろうじゃないか」  とでも叫び出してしまいそうな感じだ。  僕は情なかった。人間の心というものは、こうも化学薬品の力ひとつで一変してしまうものなの、と。

人間、動物、これみなすべて快楽原則にのっとって動いている。快と不快のスイッチとしてシャブが提示された場合、これを拒むことは不可能だといっていい。  そこにおちいらないために必要なのは、「情報」、これだけだと僕は思う。それがシャブだと知らずに服用してシャブ中にされてしまう主婦。これほどつまらないことはない。「不覚」ではすまされない。情報が必要だ。というわけで、僕は以下に自分の体験を書く。こういうものを書くと、それが証拠になって逮捕されるものなのかどうか、よく知らない。しかし、やはり書かずにすますわけにはいかないだろう。だから、こうしよう。この本に書く事柄はフィクションであり、いかなる実在の作家、売人とも関係しません。

途中、シャブがセックスにも少なからず影響する、という話を思い出して、実験的にオナニーをしてみることにした。  家にあるエッチな本を探して、床の上に十数点並べてみた。最終的にどの本をイメージのもとにするか。それが驚いたことに延々と決まらないのだ。〝よし、これでいこう〟と決定した後に〝いや、待てよ、こちらの方の長所というのは〟と検討が続く。実に、三時間近く、僕はこの作業を繰り返していた。  よく、〝シャブ中にホウキを持たせると、一日中その辺を掃いている〟という。

故・澁澤龍氏が、「滝に打たれて十年で得られる感覚が、ドラッグによって得られるなら、それはまったく同じことなのであって、ドラッグをどうこういう筋ではない」といった旨のことを書かれている。賛成である。

「踏み石理論」なるものがある。たとえばマリファナを吸った人間は、より強いドラッグ、コカイン、ヘロインなどへ走るという説である。これは、アメリカのカーター時代の膨大なリサーチによって否定されたものだ。当たり前だろう。ビールを一度飲んだ人間が、ウイスキー、ウオッカへと飛び石していく確率は非常に低い。僕のようなアル中になる確率はとても低いのである。

» アマニタ・パンセリナ(著:中島らも)


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