Written by Manabu Bannai

今夜、すベてのバーで:アル中の小説ですが、本当に学びが深い

本の概要

「この調子で飲み続けたら、死にますよ、あなた」それでも酒を断てず、緊急入院するはめになる小島容。ユニークな患者たちとの会話や担当医師との対話、ときおり訪れる、シラフで現実と対峙する憂鬱、親友の妹が繰り出す激励の往復パンチ――。実体験をベースに、生と死のはざまで揺らぐ人々を描き、吉川英治文学新人賞に輝いた作品。

読んでみて思ったこと

僕はアル中ではないですが、なんとなく手にとってみたら、面白く、かつ奥も深く、サクッと読んでしまいました。

作者の実体験に基づいて書かれており、アルコール中毒だったり、あとはドラッグ依存に関する知識も深まります。また文章の中には示唆に富んだ表現も多く、例えば下記です。

日本はほどなくアルコールとドラッグの洗礼を受ける。なぜなら、これからの日本では物と金のかわりに「時間」が与えられるから

現代では、もしかしたら「YouTube=アルコール」なのかもです。もしくは「TikTok=アルコール」とも言えて、もっというと「Netflix=アルコール」ですかね。気になる方は是非、無料サンプルからどうぞ。無料で試してみて、面白いと感じたら読み進めてみてください。

僕のハイライト

イギリスのギャング、 売人 たちは、需要拡大のために「小学生」のマーケットを開拓している。学校帰りの子供たちに、「おもしろいおじさん」がまとわりついて、「ハッピーパウダー」なるものを売りつけるのである。中身はもちろん、ヘロインやコカインだ。最初の二、三回はタダで味見をさせて、それ以降は金を持ってこさせる。

こういう状況に対して、カーターは楽天的すぎると言っていい。だから唯一の解決策は、ドラッグを政府が専売にすることである。おれは何も冗談を言っているのではない。アメリカはいざしらず、日本の政府にはその「資格」がある。ガンの元凶である煙草を専売し、公営ギャンブルでテラ銭をかせぎ、酒税で肥え太ってきた立派な「前科」があるからだ。ギャングにドラッグの利権を渡すくらいなら国が汚名をかぶって管理すればいい。そしてその利益の何十分の一かを、中毒者たちの療養に還元すべきだ。日本の政府には、ドラッグ常用者を逮捕する資格はない。アル中を量産している形而下的主犯は政府なのだ。犯罪者に犯罪者を逮捕する資格はない。

おそらくは百年たってから今の日本の法律や現状を研究する人は、理不尽さに首をひねるにちがいない。タバコや酒を巨大メディアをあげて広告する一方で、マリファナを禁じて、年間大量の人間を犯罪者に仕立てている。昔のヨーロッパではコーヒーを禁制にして、違反者をギロチンにかけた奴がいたが、それに似たナンセンスだ。まあ、いつの時代でも国家や権力のやることはデタラである。

生きよう生きようとしてても、たとえば雷が落ちてきて死ぬかもしれない。でも、それはあたしにとっては正しい、そうあるべき死に方だから文句は言わないわ。あたしは、自分とおんなじ人たち、生きようとしてても運悪く死んでしまう人たちの中で生きたいの。生きる意志を杖にして歩いていく人たちの流れの中にいて、そんな人たちのためだけに泣いたり笑ったりしたいの。だから、思い出になってまで生き続けるために、死をたぐり寄せる人たちと関わりたくないわ。そんな時間はないんです

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