日本人のための大麻の教科書:七味唐辛子には「大麻」が入っています
本の概要
大麻。この植物は、日本では「違法な薬物」というイメージが強い一方、海外では再評価され、大きな経済効果をもたらしている。日本において大麻は「稲作より早くから栽培され、衣食住に用いられてきた農作物」だったという事実は、あまり知られていない。
読んでみて思ったこと
大麻と日本の歴史を学べます。
色々と学べたのですが、中でも驚いたことは「横綱が付ける白い繊維=大麻である」という事実です。あと七味唐辛子の中には、大麻の実が入っています。
大半の日本人は知りませんが、日本では古来から大麻が使われており、その習慣は現在でも持続しています。
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僕のハイライト
大麻は天武天皇の命によって編纂された日本最古の歴史書『古事記』(712年)と『日本書紀』(720年)に登場するあまりに有名な神話、天岩戸神話にも登場します。
農林省が1925年に発行した「日本内地ニ於ケル主要工芸農産物要覧」には、繊維作物として「大麻」、油糧作物として「大麻子(麻の実)」が記されています。大麻は、国の主要な農作物として位置づけられていたのです。また、当時は学校の教科書にも大麻の栽培方法が記載されていました。
伊勢神宮が頒布する神札を「神宮大麻」といい、毎年なんと800万体を超える神札が全国の神社を通して配られています。初詣などで、居住する地域の氏神さまにお参りに行った際、「大麻あります」というような張り紙が見つかると思いますが、それは神宮大麻のことです。「日本人にとっての大麻とは、第一義にお札である」という事実を知れば、大麻という言葉への印象も変わるのではないでしょうか。
「横綱」が大麻でできているという点は声を大にして言っておきたい事実です。意識することは少ないかもしれませんが、国技である大相撲は神事です。横綱はもちろん大相撲の最高位の称号ですが、その語源は横綱だけが腰に締めることを許されている白麻製の綱の名称に由来します。この白麻とは大麻の繊維のことです。国技の最高位の証が大麻の繊維であるという事実は、かつての日本人にとって大麻がどのような存在だったかを知るうえで非常に示唆的です。
北米でコロナが流行したとき、大麻ディスペンサリーは「エッセンシャルワーク(生活維持に欠かせない職業)」に認定されていました。大麻は生活必需品となっているのです。緩和ケアのために使用している人、睡眠障害のために使用している人、さまざまな目的の多くのユーザーがいるので、ディスペンサリーを閉めれば社会に悪影響が生まれてしまいます。
リーバイスでは綿(cotton)とヘンプ(hemp)を混ぜる「コットナイズド・ヘンプ(cottonizedhemp)」という手法で、ヘンプを使いながらも従来の綿と同じような肌触りの商品をつくることに成功しました。ヘンプ素材は吸水性・速乾性・抗菌性の高さなど利点がたくさんあるのですが、どうしても節が多くなってしまい、堅く、ゴワゴワした肌触りになるデメリットもあります。そこを技術革新で乗り越えたのです。私たちはジーンズメイカーなので、商品のクオリティを大事にしています。コットナイズド・ヘンプの商品は、綿100%の商品とほとんど差がないタッチに仕上がっています。
コットナイズド・ヘンプの取り組みは、どちらかといえば「企業としてのメッセージ」に近いかもしれません。実際に利益のみにフォーカスすれば、綿素材を使った方がいいことも多いのです。しかし綿は栽培に多くの水、農薬、肥料などを必要とし、環境負荷が大きいです。かつて世界4位の湖面面積を誇ったアラル海が干上がってしまったのも、綿花栽培が原因の一つとされています。それに対し、ヘンプは水を多く必要としない、雨水だけで育つ、多くの農薬を必要とせず土壌にやさしいなど、環境負荷が少ないのです。
麻の実を用いた食材で、圧倒的に知られているのは定番の調味料「七味唐辛子」です。うどんやそば、鍋をはじめ和食には欠かせない薬味であり、世界に誇る日本独自のスパイスともいわれています。その七味のうちの一味は、麻の実なのです。
豆腐を麻の実、笹がき(笹の葉の形のように切ったごぼうやにんじん)などと一緒にごま油で炒め、出汁を加えて煮込んだ料理で、鹿児島から全国に伝わった「けんちん汁」。
近年、麻の実は「ヘンプシード」という名で注目を集めています。そのきっかけとなったのは2009年に発行された『Superfoods(スーパーフード)』という書籍です。スーパーフードとは、他の食材よりも豊かな栄養成分が多数含まれている「高栄養食品群」を意味し、著者のデイヴィッド・ウォルフ氏はクコの実(ゴジベリー)、カカオ、マカ、蜂関連食品(ハチミツ、ビーポレン他)、スピルリナ、AFAブルーグリーンアルジー、マリンフィトプランクトン、アロエベラ、ココナッツと並んで、ヘンプシードを10種のスーパーフードの一つとして取り上げ、食材のルーツ、含有する栄養素、食べ方などをくわしく解説しています。ヘンプシードは高たんぱく質で、必須アミノ酸がすべて含まれ、体で合成できない必須脂肪酸であるオメガ6とオメガ3が3対1と理想的なバランスで、食物繊維、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅も豊富に含まれています。世界的に健康志向が高まるなか、手軽に食事に取り入れることができ、少量を食べるだけで効率的に栄養を摂取できるヘンプシードは、オーガニック食品愛用者やベジタリアンなどを中心に人気の食材となりました。なお、ヘンプシードは用途に応じてさまざまな形状に加工されており、次の4種類に大別できます。
①ヘンプシード:七味唐辛子の一味など、従来から食されてきた形で、表面のやや固い殻がついたままのもの。②ヘンプナッツ:食べやすくするため、表面のやや固い殻を剥がした白い中身。③ヘンプシードオイル:ヘンプシードを搾り、抽出された植物性の油。④ヘンプパウダー:搾油したあとの油粕を粉砕したもの。
カンナビノイドとは、炭素数21の化合物で100種類以上あり、よく知られているのがマリファナの主成分で有名なTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)と向精神作用のないCBD(カンナビジオール)です。これらについての詳細な説明や、その他のカンナビノイドについて気になる方は、ぜひ『カンナビノイドの科学』(2015年)などの専門書をご参照ください。
また、2020年に大麻の医療利用に関して歴史的といえる出来事がありました。大麻に関する各国の規制は、国際条約に基づいて制定されていることがほとんどですが、WHO(世界保健機関)のECDD(依存性薬物専門家委員会)が2019年1月に大麻およびカンナビノイドの医療的価値を認める勧告を行ったのです。国際的な薬物の統制には「スケジュール・リスト」というシステムが採用されており、これによって薬物の有害性や医療価値について評価が下されます。2019年のこの勧告によって、それまでヘロインやモルヒネなどと同じとされていた大麻およびカンナビノイドの評価の変更が促されました。そして、2020年12月、国連の麻薬委員会(CND)は53カ国による投票を行い、WHOの勧告を批准しました。この結果、世界各国での大麻の医療利用に関する規制緩和や市場の動きはさらに加速することになりました。
大麻を薬として捉えるなら、「アントラージュ効果」も欠かせません。これは、CBDやTHC、テルペンなど大麻草のさまざまな成分がハーモニーのように重なって、効果を存分に発揮するというものです。CBDなどの有効成分を単一で取り出すだけでは効果が不十分で、そういう意味では「多成分である漢方薬のような薬に近い」という方がイメージしやすいかと思います。
僕は、外を消去した社会を〝クソ社会〟と呼び、言葉と法と損得への〝閉ざされ〟の外に出られない人間を〝クズ〟と呼びます。いまの若い世代はこうした〝閉ざされ〟に気づきません。祭りや性愛による〝開かれ〟の記憶がないからです。だから不全感を抱えるのは当たり前です。人間はゲノム的に、言葉と法と損得への〝閉ざされ〟に耐えられないのです。だから多くの人が「生きづらい」と感じています。
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