悪童日記:戦争には、血も涙もない。天才の兄弟が心を破壊する物語

本の概要

戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。女性亡命作家のデビュー作。

読んでみて思ったこと

戦争には血も涙もない。それを、この本が語っています。

天才の兄弟が、自らの「心」を破壊することで、生き抜く物語。

この解釈は、僕が考えたことです。間違っていたら申し訳ありません。しかし天才の兄弟は、最初の頃には「人間の心」を持っていました。しかし訓練を通し、やがて心を破壊して、生き抜きます。

舞台は第2次世界大戦のハンガリー。僕は学校の歴史の授業は、ずっと寝ていました。なぜなら退屈だから。暗記教育なんかさせるよりも、この本を1冊与えて、生徒に論考を書かせる方が、よっぽど良いと思います。

この文章の執筆時点(2023年1月)では、ウクライナで戦争が起こっていますが、何故このような悲惨なことが繰り返されるのか。多くの人に手にとって欲しい1冊です。

戦争が、如何に狂っているか。そして人間を狂わせるのか。
多くのことを考えさせられる1冊だと思います。

僕のハイライト

「あの連中が、徴発を始めるんだよ。所構わず踏み入ってはものを漁る。そして、何でも気に入ったものを分捕る。わしは前にも戦争をくぐり抜けたからね、どんなふうに事が運ぶか知っているんじゃ。もっとも、わしらとしては、心配することは何もないわい。ここには、めぼしいものなんか何ひとつありゃせんし、わしは連中と口が利ける」 「でも、彼らはいったい何を探すの、おばあちゃん?」 「敵のスパイ、武器や弾薬、腕時計や金、それに女たちじゃ」  午後になると、案の定、軍人たちは家々を片っ端から探索しはじめる。彼らに門を閉ざす家があると、威嚇射撃をしておいて扉を押し破る。

ぼくらの〈解放者たち〉に対しては、また、ぼくらの国の新政府に対しては、いかなる批判、いかなる冷やかしも許されない。単なる密告を根拠に、訴訟手続きを踏まず、裁判の判決も経ないで、誰でも投獄される。多くの男女が原因不明のまま姿を消し、そうなったら最後、彼らの消息は、もうけっして近親者に届かない。


※下記のハイライトはネタバレを含むので、見たくない方は見ないでください




















ぼくらは、大木の後ろに、腹這いになって伏せている。両手で、両耳を塞いでいる。口は開けている。爆発が起こった。ぼくらは、別の二枚の板と亜麻布の袋を持って、鉄条網まで走る。おとうさんは、二つ目の柵の近くに横たわっている。そう、国境を越すための手段が一つある。その手段とは、自分の前に誰かにそこを通らせることだ。手に亜麻布の袋を提げ、真新しい足跡の上を、それから、おとうさんのぐったりした体の上を踏んで、ぼくらのうちの一人が、もうひとつの国へ去る。残ったほうの一人は、おばあちゃんの家に戻る。

» 悪童日記(著:アゴタ クリストフ)

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