ユーチューバー【自由、希望、そしてセックス】

村上龍の小説。書店で目につき、読みました。感想としては、村上龍氏が健全です。今回も独特なタッチで、世界に引き込まれました。

「みんなで飲むというのはなかった。みんなで飲むのは嫌いだった。ただみんなで飲むのが好きな連中履いたよ。今でも、よく覚えているのは、早慶戦のあとで、野球は早慶戦だけど、新宿駅に集まって、みんなで飲んでた。おれは、そうゆう連中は、死ねばいいと思ってた、いや、殺したいほど憎いとかって意味じゃないんだ。単に、死んだほうがいいって、そんな感じかな。」

素晴らしい文章。心の透明度が100%だと感じた。このように本音で文章を書きたいと思う。

問題は、男として好きではない男と結婚した女のリスク。そのリスクは語られることが少ないでしょう。どうなんだろうね。大抵の女は、自分ってこんなもんだろうということで、適当な相手を結婚しているという気がしてしょうがないんだけど、どうなんだろう、それってどこに歪みが現れるのかな。いや、女として、好きな男っていうのはわかりづらいと思う。

セックスが合う合わないって、関係ないと思うんだ。好きな男とはセックスはうまくいくからね。その男が、セックスに慣れてる場合だけどね。いい曲っていうのは、聞きたいと思う曲じゃなくて、いったん聞いたら止められない曲でしょう。結婚も同じだと思うんだよ、好きな男というのは、いっしょにいたい男じゃなくて、いったんいっしょにいたら別れられない男だと思うんだ。

独特な主張をしつつ、独特な細かい描写(=いい曲っていうのは、聞きたいと思う曲じゃなくて、いったん聞いたら止められない曲)で読者を引き込みつつ、そして納得させる文章。素晴らしいと思った。自分も取り入れたい。

初心に返りたくないんだ。ぼくも歳を取ったけど、新しいものを書きたいと思ってて、初心に返ろう、追い詰められて処女作を書いたときに戻ろうなんて思わないんだ。だから新しい小説は、決めてある。人生にはこういう日もある、という感じかな。ついていない日ってある。とにかくついていなくて、ごく普通に、ついてない感じなんだよ。そうだな、靴紐が切れて、転んだら、何か汚いものの上に手をついてしまって、ビルのトイレで洗っていたら、すみません、、断水ですと係の人に言われ、突然水が止まるとか、そういうついてない日について書きたいんだ。

こちらも前回と同じで「主張 → 身近すぎる具体例(=靴紐が切れて、転んだら、何か汚いものの上に手をついてしまって)」という文章。小説家では、こういった言い回しが上手い人が多い。自分も学びたいと思った。

小説自体も楽しいけど、文章構造も楽しめた。サクッと読めて、楽しめる良書でした。

» ユーチューバー(著:村上 龍)

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